
著者:リチャード・ビトナー
監修:金森重樹
翻訳:金井真弓
発売:2008/7/4
今や世界の金融資本市場を根底から揺るがしかねない危機とされるサブプライム問題。
その発端となった米国の住宅ローン業界で、身をもってそのトンデモなさを体験した著者による告白と告発の書である。
サブプライム問題について、米国人による現場からの報告としては、日本で最初の翻訳出版であり、実際に携わった者ならではのリアリティと驚きの実態、’09年以降も広がる影響の大きさに引き込まれる。
起こったことのレポートだけでなく、その原因の追究、さらに解決方法の提案まで、サブプライムローンのレンダー(貸し手)だった立場から、分かりやすく語る。
日米の不動産市場に通じた金森重樹の監訳と解説により、日米の事情の違い、更には不動産投資家へのヒントが示されている。
1980年代後半のアメリカのS&L危機、1990年以降の日本のバブル崩壊、そして2007年のサブプライム危機。歴史は、何度でも場所を変え、手法を変え、違った顔を持ったバブルが蘇り、そして崩壊することを示しています。
実物不動産は基本的には買いから入るものなので、上げ相場では誰でもがその波に乗りさえすれば特別な知識なくして儲かります。
問題は、下げ相場でいかにしてビジネスチャンスを見出していくかです。
本書の真価は、単に米国住宅市場の動向、金融環境を知るための本ということにあるのではありません。そのような目的であれば、既に日本の経済評論家が複数の書籍を出しております。
真に価値があるのは、本書が「サブプライムローンの融資現場での融資基準とその抜け穴、不正の手口を融資担当者が語っているというまさに生の現場の状況をレポートする部分」にあります。
本書には、サブプライムローンのために人生が一変した人たちが何人もでてきますが、特定の融資環境の変化があるときに、そこには莫大な富を獲得できるチャンスが転がっています。
じゃあ、このサブプライム問題に端を発する下げの局面でいかにして儲けるか。
そのカギは、不動産の持つ収益力に着目することと考えます。
不動産が下落することは何も悪いことばかりではありません。不動産が下落しても、賃料は不動産の価値のようには下落しません。
それは、不動産においては、一定期間の契約による賃貸借が通常であるため、賃料の下落に遅効性があるからです。
ですから、不動産の下落局面では物件価格の下落が進むのに比較して賃料は相対的には下落せず、利回りはどんどん上昇していくわけです。
この下げの局面で儲けられるかどうかは、現場の融資審査の裏側、人々の熱狂あるいはパニックのパターンを学んでいるかどうかで大きな差がつきます。
サブプライムローンの担当者であった著者が語る、融資現場でのやりとりはこの点について非常に多くのヒントを僕らに提供してくれます。
もし日本でこれと同じことが起こった時に、どのようにして儲ければいいかを想像しながら読んでみて下さい。